建設業はファミリービジネス・スキルで倒産危機を乗り越えろ!

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昨今では資材高や資金繰り悪化の他、最大の課題である人手不足、特に承継者不在による倒産・廃業に追い込まれるケースが後を絶ちません。この岐路に経たされる前に、まだ後継者がいるところは先手をうちましょう!”うちの後継者優秀です!”なんて会社も一度本当に大丈夫か?この機会に確認してみてはいかがでしょうか。

今回は星野リゾートの星野佳路さんの本を中心に参考にしています。私の考察も多く含まれていますので星野さんの考え方だけを聞いてみたい方も、まずはこの記事を読んでふんわりでも知識を付けた後に星野さんの本をお求めください。youtubeでも多く上げていらっしゃいますのでそちらも参考にしていただければと思います。

それではファミリービジネス(同族経営・家族経営)について、しっかりと考えて会社を継承しよう!というお話です。ここ間違うとせっかくの会社もまともに承継されませんぜ!っていうことです。

ファミリー企業とは

ファミリービジネスとは日本語でいうところの家族経営です。同族経営とかオーナー企業なんて言われ方もしています。このファミリービジネス、結構ネガティブなイメージを抱いている人は多いのではないでしょうか。経営者家族だけがいい車乗ってる~とか、まず出世できないとか、経営者家族を批判できないとか、よくわからない経営者の血縁に給与が支払われているとか。。

会社を私物化しているように見えてしまうなんて経営者も近くにいるのではないでしょうか。自分と比較してしまうとどうしても納得のいかないことが多かったり。なぜか経営者家族は早引きが許されたり、子供が・・・とかいって勝手に帰って行ったり(笑)。妬み僻み嫉みはやめたいですね(-_-;)”経営者一家だけずるい~”とか歪んだ同調圧力はいけませんが、どうしても創業家に嫉妬感情を抱いてしまうことがある人も少ないと思います。

でも建設業の中ではとても多い!日本では実に97%の企業がファミリービジネスとのことです。そして従業員の70%はファミリー企業に属している。大企業でもトヨタやサントリーなどはファミリー企業です。ちなみに法律上の定義では上位3株主の持ち株率の合計が50%を超える会社のことです。小さな建設業はほぼ全部ファミリー企業ですね。だから特定少数の人たちが大きな影響力をもって経営をしている。

そして先ほどのネガティブなイメージは、おそらく小さな企業に多いです。具体的に10人前後の規模の会社で3人以上いたらもうイメージは家族経営。旦那社長と息子専務に総務が奥さん。まさに建設会社のイメージ。今回はこっちのファミリー企業のお話が近いかもしれません。このイメージは払拭するべきものなのか?イメージだけじゃなくて改善しなければならないところはあるのか?ファミリー企業をちょっと深堀ってみましょう。

長所・強み と 短所・弱み

長所はずばり3つ。”長期視点の経営”、”創業家の信頼”、”意思決定スピードが早い”。この3つです。

先に短所も3つ挙げるとワンマン経営、家族優先、多様性に繋がらない。

長所は曖昧です。短所はズバリでわかりやすい。長所の3つはどの企業でももつことができそうですし、ファミリー企業だからって出来ていない会社はいくらでもあります、だから伝わりづらい。逆に短所はわかりやすいですね。ほんとにこの短所はどこのファミリー企業ももってそうって思います。共通してるんですね。この短所の共通項がファミリー企業のイメージになっている。その感じが受け入れがたいと思っている若者もいたりします。

なのでこの長所3つをしっかりと打ち出せるか、今後も取り組む姿勢があるか、あとは、短所を克服する対策は打っているか。この2つをしっかりと従業員やステークホルダーに見える化しなければならないんですね。特に建設業界ではこの取組みを口に出して言えるくらい明確に行えていれば必ず人が集まる会社になります。

話を戻しまして長所をおさらいしましょう。

長期視点の経営

まずは長期視点の経営。私個人の話になりますが、私の実家も父親が2代目の建設業を営んでいます。が、2代目の時点でこの長期視点の考え方はなく、父の考え方はほぼ承継する意思がありませんでした。ただ、まだ働いてくれている従業員が数名いたのですぐすぐにつぶせない。病気により50代で引退し、そのまままだ入社して2,3年の兄が会社を承継しました。会社を継いだ兄は自分の代で会社をたたむ気満々です。こういった環境を目の当たりにしていたので私自身この長期視点の経営についてファミリー企業の長所と言われてもピンとこなかったです。経営者次第でしょって。でもこれって今の建設業界にはあるあるの考え方なのではないかな、と思います。実際に承継できていない会社や倒産・廃業がここまで身近の会社に多くあると、建設業界で働く従業員側からしてもファミリー企業が長期視点には感じられない。むしろ逆です。ファミリー企業は家族だけでやってるから廃業に追い込まれるよねって。

だがしかし!です。今回の話でいうところのファミリー企業とそれ以外を比較すると、ファミリー企業の経営者は任期が長い、30年以上。生まれてからと考えると実に引退するまでの60年以上は会社経営について考えさせられる。あくまでですが、非ファミリー企業と比較すると非ファミリー企業は利益経営に走りがち。任期が短いと人気取りと利益に走り、将来性を加味しない経営になりがちなんですね。日本政府然り(個人の感想です)。

この長期視点というのが実はものすごく価値のあるものになる。大成建設や太平洋セメント、清水建設などの長期で経営されている建設業のほか、みずほ銀行、王子製紙、IHI、いすゞ自動車、東洋紡、川崎重工業、損保ジャパン日本興和、朝日生命保険、キリンホールディングスなどなど500社以上の基礎のしっかりした企業の創業に携わった渋沢栄一はいいました。士魂商才。侍の心をもって商売を考えよう。侍の道徳心と利益を大事にする心ですね。利益を追及することは時に道徳心が置き去りになりがち。両立して初めて長期の視点を手に入れる。

もうひとつ、アメリカ建国以降のビジネス書の総まとめと言われる、近代経営学の巨匠スティーブン・R・コヴィーは言いました。“7つの習慣”で長期視点で人間形成をしないと本当の成功はつかめないよ。短期の利益を追及して成功して何が幸せなんだ?って。ちょっと宗教チックになりましたのでこのくらいに。要はハートと実務、感情と理論を兼ね揃えよう!ってことですね。これが本当の仲間や企業価値のわかるステークホルダーを持つ基盤となる。この長期視点は持っていれば必ず従業員や関係者に伝わります。

創業家の信頼

建設業、特に公共事業や大手との取引では過去実績やその人物への信頼は必ず必要なものであり、逆に民間相手やBtoBでも建材販売や建機、小規模事業者間での取引では重要度は少なくなることがあります。なので創業家の信頼はあれば活かさない手はありませんし、これを保つことは重要になります。ここでも長期視点の経営が活かされますね。役所担当者も取引先の窓口も人間です。1億円の仕事を信頼が十分でない人に任せたくないって気持ちはどうしてもある。ある程度以上の仕事は信頼できるところに任せたいですよね。

意思決定のスピード

これが一番わかりやすいかもしれません。意思決定は創業家族、もしくは少数の決定権者のみで終了です。良い承継者がいれば長期視点をもって信頼も無視しない。いろいろな視点から良い成長ができます。逆に全くファミリービジネスのいろはをわかっていない人物が2代目、3代目として承継するケースもあるので一概に強みとはならない。なのでこの特徴も必ずファミリービジネスだからの長所にはなりません。

短所

ワンマン経営はときにファミリー企業のわかりやすい短所のひとつになります。意思決定のスピードが早い、判断力のある経営者であれば成長速度が早いという長所もあるでしょうが、イエスマンばかりになってしまったり不正の温床になってしまったり、何より後継が難しい。公私混同してしまうのもワンマン経営者の特徴かもしれません。三代目が会社を潰すなんて言いますが、創業者から2代目3代目にうまく引き継がれないのは創業者がワンマンで同じことを後継者がしようとするとどうしても無理が生じてしまいます。経費の使い方や公私混同具合など悪いところばかりを引き継いでしまっている2代目3代目は当たり前ですが問題外ですが、そういったことも起こりやすくなってしまうのもワンマン経営の代償かもしれません。

家族優先、これもわかりやすい。家族にだけ甘く非ファミリー従業員に厳しいと当たり前ですが人はなかなかついてきません。気付いていないようで従業員はしっかりと経営者をみています。従業員を評価するように経営者も評価されています。ファミリーと非ファミリー従業員の処遇・待遇で大きな差があると従業員のモチベーションは低下します。良いか悪いかは置いといて年功序列型・終身雇用型よりジョブ型といわれ、若者離れ、人手不足で取り合いになる昨今の建設業では尚更こういったスキを見せると鬱憤をはらすように転職していく人材がでてきてしまいます。そういった人材は出ていけばいいなんて言える方には必要ないかもしれませんが。

最後の多様性に繋がらない。この場合の多様性は、女性や外国人が多いことや、いろいろな価値観をもった人が入社できるかどうか。多様性は意思統一ができたり阿吽の呼吸で一時のスピード感や上層部の働きやすさは上がり一時に強みにはなりますが、長い目でみたらやはり短所となることが多い。上層部からすると同じような人が集まってるほうが楽なんです。建設業は背中育成の考え方が定番になってしまっていますね。これも上層部は楽です。企業の歴史が長いとどうしても昔ながらの考え方や年長者の考えが優先されがち。それだけだと変革期や現在のような人手不足期には弱点になります。また、小さい規模だとどうしてもこの多様性は生まれにくいということもありますが、ここを突破しないと今後につながらない。課題は増えますがしっかりと対処したいところですね。

いざ実践

課題が浮き彫りになってきたところで、あとは実践あるのみです!今までの強みと弱みを継ぐ側・継がせる側双方が頭に入れてコミュニケーションをとらないと話ができませんのでまずは擦り合わせて。事業を承継するときに考えなければならないのは、継ぐ側と継がせる側の双方が同じ力で同じベクトルに向かうことが必要不可欠です。継がせる側が強く出てしまうことを避けなければなりません。今までの経験値や、やってきた業績は当たり前ですが先代の勝ちです。そこを認めた上で五分五分にならなければなりません。

本当に成功する承継を行うためにはすごくたくさんのハードルがあります。最初のハードルがこのお互いが同じ目標に向かうこと。そして継がせる側がもう一度学びなおさなければならないというハードル。これは今まで成功を納めてきた社長さんになればなるほど学びなおすことが難しい。そして既得権益と言われる満足心も未来をかすめる曇った眼鏡になります。

そして根本的な経営を学び直さなければならない。現在のこともしっかりと学ばなければならない。知ってる顔をしないようにしなくてはならない。同じく継ぐ側もしっかりと学び、必要なことを理解してようやくスタート地点です。そこから実行プランを作り、数年かけて遂行していく。この実行プランについては一気通貫したものであれば私はどのようなものでも良いと思います。これを二人三脚でやっていくことが大事なんですね。

今は業者不足、人手不足で引く手あまたでいいかもしれない。だがいろんな業界からいろんな考え方が入ってきていますし、小さな企業はいつ淘汰されてもおかしくない。そんな荒波にも負けない強い仕組みと組織作りが必要です。そして次代につながる継がせる側もうらやむチームを作り、チーム型経営で時代を乗り越えていこう!ということですね!

チーム型経営

継がせる側は継ぐ側よりも業界知識やいろいろなことへの対応力を経験値として持っています。その強みを継ぐ側一人で背負い込むのではなく、役割分担として組織を作るということです。後継者を中心とした経営幹部組織を作るんですね。

意思決定をオーナー独断からチームで合議の意思決定へ

経営を経験値からデータ分析へ

管理をどんぶり勘定、成り行き任せから目標管理へ

ファミリービジネスはアメリカでは経営学として認知されつつあるようですが、日本ではまだまだのようです。本気で考えて、これを見ている少数派のみなさんはチーム型経営でぜひ地域を引っ張る地域No.1になり地域の発展、地域の安心にぜひ役立てましょう!

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